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SLEEP APNEA SYNDROME

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群について

誰しも睡眠時無呼吸症候群という言葉を耳にしたことがあるのではないかと思います。
略称で、OSAS(obstructive sleep apnea symdrom)とも言われています。
睡眠時無呼吸症候群は80種類以上あるといわれている睡眠関連疾患のひとつであり、閉塞性と中枢性の二つがありますが、9割が閉塞性です。歯科に関連するものはこの閉塞性になります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時に上気道閉塞により上気道抵抗が増大し、いびき、無呼吸、低呼吸が頻回に起こることで睡眠障害やその合併症を認める疾患です。
この疾患が抱える大きな問題は2つあります。
一つ目は無呼吸を繰り返すことにより睡眠の質が低下し、日中のパフォーマンスを低下させてしまう可能性があることです。厚生労働省の報告書によると、「疲労や心身の健康リスクが上がるだけでなく、作業能率を低下させ、生産性の低下、事故やヒューマンエラーの危険性を高める可能性がある」と記されています。例えば睡眠時無呼吸の患者が引き起こす交通事故の確率は健常者の7倍とされています。大きな社会問題であり、経済損失です。 二つ目は繰り返す無呼吸により心臓に負担をかけ、交感神経活性の亢進が続き、さまざまな循環器疾患の発症や悪化を促している。睡眠時無呼吸により、高血圧、脳血管障害、狭心症、心筋梗塞、不整脈、糖尿病、肥満などの循環器疾患や代謝性疾患が合併するリスクが約2~4倍高まることが報告されています。

睡眠時無呼吸の有病率

日本国内では約500万人の患者さんが存在すると言われていますが、そのうち検査・治療を受けている患者さんは50万人と非常に少ないのが現状です。
つまり、まだ9割の患者さんが治療を受けていないということになります。

睡眠時無呼吸の病態

無呼吸は覚醒中には起こらず睡眠中にのみ気道が狭くなり起こります。
その理由は睡眠中は舌や軟口蓋ともに筋肉が緩むからです。
軟口蓋の先端である口蓋垂(のどちんこ)が狭くなった気道に吸い込まれるように震えます。これが「いびき」です。
この時、呼吸流量が減少し、酸素低下や覚醒を伴うと「低呼吸」という状態になります。
さらに気道が狭くなると、軟口蓋が舌と喉の奥の壁(咽頭後壁)との間に挟まり、気道が閉塞すると「無呼吸」の状態になります。

睡眠時無呼吸の症状

  • 自覚症状

    大きないびき、呼吸の停止、夜間の覚醒、夜間の頻尿、寝汗をかく、日中の眠気、疲労感、寝起きが悪い、熟睡感欠如、集中力低下、インポテンツなど

  • 関連する全身疾患

    高血圧、不整脈、肥満、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、脳血管障害、心不全、虚血性心疾患など

睡眠時無呼吸になりやすい局所的要因

鼻閉
何らかの理由で鼻閉状態になっていると口呼吸優位となり、開口して、舌が後方へ移動し、咽頭腔が閉塞しやすい状態になる。
肥満
全身的に肥満になると、咽頭周囲粘膜、舌、軟口蓋が肥厚し、咽頭部が狭窄しやすくなる。
小下顎症
舌が後方に移動するため、咽頭部が狭窄しやすくなる。
扁桃肥大
アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大は咽頭部が狭窄しやすくなる。
舌骨低位
解剖学的理由や加齢により舌骨の位置が低くなる。
睡眠時の
頭の角度
寝る時に枕が高くなったりすると頚部が前屈になり咽頭腔が狭窄する。
その他の要因
妊婦や閉経後の女性、飲酒など。

OSASを治す目的は?

何のために治すのか?どんな症状があったから検査をした方がいいのか?
例えば「日中の眠気を無くしたい」「睡眠の質を高めたい」「高血圧を治したい」「夜間覚醒を無くしたい」「心疾患の悪化を予防したい」「周りに迷惑をかけないよういびきを無くしたい」など患者さんによって様々です。
どんな治療法でも患者さんに負担を強いる治療ではあるため、はっきりしたゴール設定は重要です。
「無呼吸は激減していないが、日中の眠気が減った」「いびきが減った」などでも十分ではないでしょうか?

睡眠時無呼吸の検査

医科での検査が必ず必要になります。
PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査と簡易検査があります。PSG検査は睡眠の状態と呼吸の状態を診る検査ですが、簡易検査は呼吸の状態しか診ることはできません。
PSG検査の場合はAHI(無呼吸と低呼吸の1時間あたりの回数)、簡易検査の場合はREIという指標を基準にし、治療法を決定します。

睡眠時無呼吸の治療

  • 睡眠体位の改善
  • 外科療法(医科での治療)※重症の場合
  • 生活習慣の改善
  • CPAP療法(医科での治療)※中等から重症の場合
  • 禁酒
  • 舌下神経電気刺激療法(医科での治療)※中等症以上でCPAP療法が難しい場合
  • 減量
  • 口腔内装置(OA:Oral Appliance)(歯科での治療)※軽症から中等の場合

無呼吸診療の流れ(医科歯科連携)

  1. Step01【医科】睡眠検査・診断

    睡眠検査を行い、睡眠時無呼吸症候群であるかどうかの診断をします。※この検査は必須となります。

  2. Step02【歯科】歯科的診断

    医科からの打診後、歯科でも診断をします。OA治療(口腔内装置)が可能であれば、装置装着や調整(※タイトレーション)を行います。

  3. Step03【医科】睡眠検査・評価

    睡眠検査を行い、OA装着時の睡眠評価を行います。

  4. Step04【歯科】OA・口腔管理

    OA装置の見直しや口腔管理を行います。

  5. Step05【医科】再診断・再評価

    状況や症状の進捗によっては医科にて再診断を行います。

※タイトレーションとは
OAは下顎を前方へ移動させて製作されます。その移動量は初めは初期設定値で設定されます。
効果のある値は個人差がありますので、微調整を繰り返しながら適正な移動量を決定します。
この調整のことをタイトレーションといい、OA治療において最も重要になります。
間違った移動量になると効果が出ないばかりではなく、顎の痛みなどの副作用も出る可能性があります。

口腔内装置(OA)とは

睡眠中に装着し気道を確保することにより、いびきや閉塞性睡眠時無呼吸を改善する歯科的な治療法であり、装着中にのみ効果を発揮する対症療法です。
軽症から中等の場合が適応されます。
装着することで下顎が前方移動し、鼻咽腔・中咽頭・下咽頭までの気道が開大、維持され睡眠中の無呼吸や低呼吸といった呼吸障害を改善させる効果があります。
医科で診断され、紹介状があれば保険適応になります。
特に女性・若年層・痩せ型・首が細い人に効果が出やすいとされている装置です。

装置の種類

通常は上下一体型のハードタイプ(保険適応)になります。その他、保険外になりますがソフトタイプや上下分離型などがあります。

CPAP療法(医科での治療)と比較して

装着時の治療効果はOA治療と比較して、中等から重症の適応であるCPAP療法が確実にあります。
しかしながら、装着感や継続率はOA療法が勝ります。
治療効果があっても、継続使用が困難であるならば意味をなさず、CPAP療法の治療圧が大きいと耳痛、腹部膨満感、噯気(おくび、げっぷ)、おならなどの症状が出るため、その治療圧を下げる代わりに、OA療法を併用するという治療も考えられています。
CPAP療法の適応であるが、使用が困難だった患者でも治療圧が低い例ではOA治療で効果が出る場合があります。 出張など外泊が多い患者さんは、自宅ではCPAP療法、出張時にはOA療法と利便性を考慮して併用する方法もあります。

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