大人のマウスピース矯正治療
マウスピース矯正について
マウスピース矯正とは、マウスピース型の透明な矯正器具を歯に装着して歯列を動かしていく矯正治療方法です。
具体的には、コンピューター上で治療ゴールまでの歯の動きをシミュレーションし、いくつものマウスピースを順次作製・装着することによって、歯を理想の位置へ動かしていくCAD/CAM技術を利用したシステムとなります。
固定式であるワイヤーを用いた矯正治療とは異なり、取り外しが可能ですが、1日20~22時間の装着が必要です。
ワイヤー矯正とは違う治療方法?
従来は矯正治療といえばマルチブラケット装置(いわゆるワイヤー矯正)を用いた治療でしたが、歯科分野もデジタル3D技術の恩恵を受けるようになり、最近ではマウスピースを用いた矯正治療が普及してきました。
これは一般的にマウスピース矯正(またはアライナー矯正)と呼ばれ、マウスピース型矯正装置(商品名)が正式名称になります。
従来のワイヤーを用いた矯正治療が無くなったり、変わったわけではなく、別物と言えます。
※当HPでは説明の便宜上「マウスピース矯正」と統一して表記させていただきます。
数あるマウスピース矯正のメーカー
日本において代表的なマウスピース矯正装置は以下のものになります。
・インビザライン(アラインテクノロジー社 アメリカ)
・シュアスマイル(デンツプライシロナ社 アメリカ) (当院採用)
・クリアコレクト(ストローマン社 スイス)
これら以外にも国産のブランドを含め、多数メーカーが存在します。
これらはすべて世界的に信頼のおけるブランドであり、それぞれ特徴はありますが、基本的なシステムは似通っており、フルデジタル方式を採用しています。すべての制作工程をコンピューターと機械が行うことで、人の手を介して起こり得るヒューマンエラーを極限まで減らすことができるので、驚くほどに正確でスピーディーです。
具体的には、指定された高性能の光学式の口腔内スキャナーを用いて、患者さんの歯列や噛み合わせのデーターを採取し、併せて写真、レントゲン写真やCTデーターをメーカーへ送信します。
その時にこちらからの要望も提出します。
数日後にはメーカーから治療ゴールまでのシミュレーションデーターが届き、マウスピースの枚数、必要なアタッチメントの部位や数、すきまを作るためのIPR(歯冠削合)の部位などが指定されてきます。
最近では大手ブランドの特許の一部が切れた恩恵で、さまざまなメーカーが参入をしてきており、コストを抑えて低価格の商品も見かけられます。
しかし、精度がすべてと言っても過言ではない医療技術でありますので、慎重になりたいところです。
マウスピース矯正の特徴
01装着していても目立ちにくい
半透明なマウスピースを装着するため目立ちにくく、矯正治療をしていることを周囲の人に気付かれにくいです。
02自分で装置の付け外しができる
どうしても装置を外す必要がある時に対応ができます。(楽器を拭く方や激しい運動をする方、結婚式などのライフイベントがある方)
03歯磨きの時には外せて清潔を保ちやすい
通常の歯磨きができるため、矯正器具で歯ブラシが届きづらいということもありません。
04矯正器具を気にせず食事が楽しめる
食事の際は矯正器具を外すことができるので、普段通りの食事が楽しめます。固いものを食べて装置を壊してしまう可能性がありません。
05お口の中に傷や口内炎ができにくい
マウスピースにはワイヤー装置のように突起物がないため、お口の中で傷や口内炎などのトラブルを起こしにくいです。
06通院回数が少なく治療時間が短いため忙しい方でも治療が続けやすい
ワイヤー矯正に比べ、治療回数が少なく治療時間が短いためスケジュールの調整がしやすく、仕事や学校への影響が少ないです。
07お口の型取りをしなくても治療ができる
高性能口腔内スキャナーを使用するので、お口の型取りをする必要がありません。
ただし、検査時の資料採得では型取りを行う必要があります。
08金属アレルギーのある方でも治療ができる
マウスピース矯正は金属が使用されていないため、金属アレルギーをお待ちの方でも安心して治療を受けることができます。
09費用が抑えられる
術者への依存度が高いワイヤーを用いた矯正治療に比べると、自己管理が主体であるため治療費は抑えられます。
当院ではシュアスマイルを採用しています
「マウスピース矯正」と聞くとインビザラインを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
インビザラインはマウスピース矯正の草分け的な存在であり、世界シェアNo.1の最大手で、最も著名なブランドです。インビザライン=マウスピース矯正と誤認されている方もいますが、それほどまでにインビザラインの普及率が高いのだと言えるでしょう。
当院で採用しているシュアスマイルは、世界最大手の歯科機器メーカーであるアメリカのデンツプライシロナ社のブランドになります。デンツプライシロナ社はセラミックの被せ物や詰め物を短期間で製作するシステムの「セレック」を開発したメーカーです。クリアコレクトはインプラントで著名なストローマン社のブランドです。
当院がインビザラインではなくシュアスマイルを採用している理由
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マウスピースの形態が選択できる
スカラップとストレートの2種類から選択でき、歯頸部からの長さも選択できます。
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術後イメージを確認できる
術後のスマイル写真の予想ができるためイメージが掴みやすい状態で治療が可能です。
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治療シミュレーションが可能
CTデーターと連動させることによって歯根の動きをシュミレーションして確認することができます。
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アタッチメントの
形・大きさ・数を指定できるアタッチメント(歯の表面に貼り付ける突起物)の形、大きさ、数を指定することができます。
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シュアスマイルVproが付属する
シュアスマイルで治療を行う際、治療加速装置のシュアスマイルVproが付属します。これは歯科矯正治療の補助デバイスで、自宅でマウスピース装着時にこの装置を1日5分程度噛むことによって、発生する振動が歯の移動を促進させたり、不快感を和らげる効果があります。
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治療期間を3年で
一区切りにしている治療計画をシミュレーションした時に、3年以内であればマウスピースの枚数に制限はありません。
3年を超えるような場合は追加費用が発生します。つまり、それはマウスピース矯正では治療が困難な症例と判断されるので、他の治療法も考えるべきというメッセージとも考えられます。そのような企業としての姿勢に賛同するため -
費用が抑えられる
ランニングコストが、抑えられているため、患者さんへ治療費を還元することができます。
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特殊素材を使用
マウスピースの素材は「 Essix®️ 」という特殊な素材で作られています。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正の比較
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ワイヤーを用いた矯正治療(唇側) マウスピース型矯正装置(シュアスマイル)を用いた矯正治療 目立ちにくさ △ ◎ 違和感 △ △ 適応症の広さ ◎ △ 痛みの少なさ △ ○ 食事の快適さ ○ ◎ 歯の磨きやすさ △ ◎ 虫歯のリスク △ △ 治療の進行スピード ◎ △ 協力の必要度 普通 高い 治療の仕上がり ◎ ○ しゃべりやすさ ○ △ 費用 △ ○ ※あくまで一般的な目安であり、症例により異なります。
当院はリンガル(舌側)矯正はおこなっておりませんので、この比較には当て はまりません。
費用
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治療期間 回数 料金 マウスピース矯正 0.5~2年 10~25回 620,000~770,000円 ※矯正歯科治療は公的健康保険の対象外の自由(自費)診療となります。
※治療期間、回数は一般的な症例を想定していますので、前後することがあります。
※料金は一般的な症例を想定していますので、前後することがあります(矯正検査料、診断料、調整料、保定装置代金を含んでいます)。
※掲載の料金は税込の金額です。
マウスピース矯正(シュアスマイル)の注意点とは?
- 適応症が限られる
- 従来のワイヤーを用いた矯正治療と比べて、同じレベルではなく、明らかに推奨される症例が少ないです。
そのため、患者さんが望まれてもおすすめできない場合があります。例えば抜歯が必要な症例は条件付きであり、歯の大きな移動を必要とする症例、骨格性の不正を有する症例、混合歯列期の症例などは推奨されません。公益社団法人日本矯正歯科学会による「アライナー型矯正装置による治療指針」でも示されています。 - 自己管理が
重要になる - あくまで装着時間は毎日20~22時間です。原則食事と歯磨き以外は装着する必要があります。したがって使用状況によって効果が大きく異なります。
- 口腔清掃を徹底する必要がある
- 歯磨きが不十分な状態でマウスピースを装着すると、唾液の自浄作用がないため、かえって虫歯になりやすくなります。
そのため口腔清掃が行き届いた状態で装置を装着する必要があります。
マウスピース矯正が向かない患者様もいます
マウスピース矯正は難しい歯並びや、抜歯症例には基本的には適さず、歯の動くスピードもゆっくりです。従来のワイヤーを用いた矯正治療のように適応症例に寛容ではありません。
当院においてはマウスピース矯正(シュアスマイル)を希望されても、不適応と判断した場合は患者様にご理解を頂くことがございます。
または、マウスピース矯正治療の苦手な部分のみをワイヤーを用いた矯正治療でカバーするというハイブリッド治療をご検討頂くこともございます。
当院のマウスピース矯正治療をお考えの方へ
マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも、治療が簡単なイメージがありますが、決してそうではありません。適応症例の範囲も狭く、それを誤まるとトラブルを招く恐れがあります。最近では適応症を誤り、公益社団法人日本矯正歯科学会も注意喚起をしています。どんな矯正治療法でも必ず十分な検査をし、セファロ分析を中心とした診断を行う必要があります。その上で、マウスピース矯正治療が可能かどうかの判断が必要です。そのためには治療を提供するクリニック側が、マウスピース矯正以外の選択肢を持った上で患者さんに対応する必要があります。また、患者さんもマウスピース矯正のメリットだけでなく、デメリットも受け入れる必要があります。
せっかく始めた矯正治療が、「治療をして良かった」と笑顔で終えられるようにお手伝いをさせて頂ければと思っています。
未承認医療機器を用いた治療について
当院では、マウスピース型矯正装置(製品名:シュアスマイル・アライナー)による矯正治療を行っております。
矯正治療を受ける際には、以下の点をご了承ください。
- 医薬品医療機器等法上の承認:未承認
- 入手経路:デンツプライ・シロナ株式会社へ個人依頼
- 同一成分や性能を有する他の国内承認の医薬品の有無:無し
- 諸外国における安全性等の情報:FDA認可あり。日本国内では医療機器としての矯正装置に該当しませんが、使われている素材は日本国内で薬事承認されています。
- 医薬品副作用被害救済制度:対象外となる場合がある。完成物薬機法対象外の矯正装置です。