大人のワイヤー矯正治療
大人のワイヤー矯正治療
ワイヤー矯正は一般的にブラケット矯正などと呼ばれることもありますが、言わずと知れた矯正治療を代表する治療の総称です。
マルチブラケット装置が主な装置になります。ワイヤー矯正は目立つというイメージをお持ちの方もおられますが、当院ではできるだけ目立ちにくい材料を使用することで、患者さんの不安を解消することに努めています。
長い歴史のあるマルチブラケット装置はどんな装置なのか?次の項目で解説いたします。
最も一般的で確実な自由度の高い矯正装置です
歯の表面にブラケットと呼ばれる装置を貼りつけたり、奥歯にバンドと呼ばれる金属製の帯環を被せたりし、そこにワイヤーを通し、結紮します。その力で歯を少しずつ動かしていく固定式装置です。最大の特徴は歯を3次元的にコントロールできるということです。
歯の位置や傾斜、そして歯根までも動かすことができます。そのため、精密に歯を動かすことができ、ほとんどの症例にも対応ができます。
この装置の起源は1928年とされ、それ以降、改良に改良が重ねられて、現在はストレートワイヤーエッジワイズ法というシステムが大半を占めるに至っています。またその中でもいくつものコンセプトの異なったシステムがあり、どれを取り入れるかは術者によって様々です。
AIで治療の大方が決められてしまうマウスピース型矯正装置を用いた矯正治療と異なり、確実性が高い反面、術者の技術、経験、知識が治療結果に影響を与えます。
ブラケットの種類は?
当院は原則、審美ブラケットやセルフライゲーションブラケットを使用いたしますが、後方部の見えにくい部位に関しては強度を優先し、メタルブラケットを使用することがあります。
いかなるブラケットを使用した場合でも費用が高くなることはございません。
患者さん毎に最適なブラケットを選択しています。
メタルブラケット(金属)
利点:丈夫、比較的安価
欠点:目立つ、金属アレルギーの方は注意
審美ブラケット(プラスチック、セラミック)
利点:目立ちにくい、金属アレルギーの方でも安心
欠点:メタルよりもやや高額
セルフライゲーションブラケット(セラミック)
利点:痛みが少ない
欠点:高額、少し大きい
ワイヤーの種類は?
メタルワイヤー
一般的なワイヤーです。ニッケル・チタンやステンレススチール、コバルト・クロムなどが材質です。
ホワイトワイヤー
メタルワイヤーにロジウムをコーティングしたものです。治療ステージによっては使えない場合があります。目立ちにくくなりますが、コストが高くなります。
バンド(帯環)とは?
主には奥から2番目の歯、もしくは1番奥の歯に使用する金属製のリングのことをいいます。
できれば他の歯と同様にブラケットを使用したいところですが、以下の理由によって使用せざるを得ない場合があります。
・対象となる歯がすでに金属やセラミックなどの被せ物が入っており、接着させることが難しい
・咬合力が強かったり、高さが低い歯の場合で、ブラケットの脱離の恐れがある場合
・マルチブラケット装置以外の固定式装置を併用する場合
・歯自体の性状が理由でブラケットが接着できない場合 など
マルチブラケット装置以外の装置を併用することもあります
歯科矯正用アンカースクリュー(アブソアンカー)
「矯正用ミニインプラント」や「MIA」と呼ばれることもあります。直径1.3〜2.0mmのチタン製スクリューを顎骨に埋め込みます。
今までの矯正治療では奥歯が前に寄って来ないようにするため、もしくは奥歯を後ろへ動かすためにヘッドギアのような大きな装置を使用する必要がありました。また今までは抜歯をしなければならないような症例も歯科矯正用アンカースクリュー(アブソアンカー)を用いれば抜歯をしないで済む場合も多くなりました。
その他部分的な矯正治療の場合も歯科矯正用アンカースクリュー(アブソアンカー)を用いれば比較的簡単に行えます。
これはいわゆるデンタルインプラントと異なりますので埋入や撤去も少量の麻酔で簡単に行え、痛みはほとんどありません。
顎間ゴム
上下の装置に輪ゴムを引っ掛けることによって、歯の移動を早めたり、噛み合わせを良くしたりします。すべての人に必要な訳ではありませんが、ご協力をお願いすることがあります。
ワイヤー矯正だけではなく、シュアスマイルなどのマウスピース矯正で使用することもあります。
歯列を拡げる固定式装置や大臼歯の移動を制限する固定式装置など
ワイヤー矯正のメリットMerit
- あらゆる症例に対応が可能である。
- 長い歴史があり、エビデンスが確立されているので、リスク回避しやすく治療のゴールを予測しやすい。
- 力をしっかり歯に伝えることができるので、歯根も理想的に動かすことができる。
- 白いブラケットやワイヤーを選択することで目立ちにくくすることができる。
ワイヤー矯正のデメリットDemerit
- 自分で取り外しができず汚れが溜まりやすいため、普段からしっかりしたケアが必要。
- 術者の経験の差が結果に影響を及ぼしやすい。
- 装置の種類によっては、違和感を感じやすい。
費用
治療期間 | 回数 | 料金 | |
---|---|---|---|
ワイヤー矯正 | 1.5~3年 | 20~36回 | 805,750~957,000円 |
※矯正歯科治療は公的健康保険の対象外の自由(自費)診療となります。
※治療期間、回数は一般的な症例を想定していますので、前後することがあります。
※料金は一般的な症例を想定していますので、前後することがあります(矯正検査料、診断料、調整料、保定装置代金を含んでいます)。
※掲載の料金は税込の金額です。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正の比較
ワイヤーを用いた矯正治療(唇側) | マウスピース型矯正装置(シュアスマイル)を用いた矯正治療 | |
---|---|---|
目立ちにくさ | △ | ◎ |
違和感 | △ | △ |
適応症の広さ | ◎ | △ |
痛みの少なさ | △ | ○ |
食事の快適さ | ○ | ◎ |
歯の磨きやすさ | △ | ◎ |
虫歯のリスク | △ | △ |
治療の進行スピード | ◎ | △ |
協力の必要度 | 普通 | 高い |
治療の仕上がり | ◎ | ○ |
しゃべりやすさ | ○ | △ |
費用 | △ | ○ |
※あくまで一般的な目安であり、症例により異なります。
当院はリンガル(舌側)矯正はおこなっておりませんので、この比較には当て はまりません。
当院のワイヤー矯正治療をお考えの方へ
ワイヤー矯正はその長い歴史の中でエビデンスが積み重ねられた実績のある治療法です。マウスピース矯正という選択肢がある現在でも確実性という観点からワイヤー矯正が第一選択であることは疑いの余地はありません。しかしながらその反面、専門的なスキルが要求されますので、どの歯科医院でも同じ治療結果が得られるというものではありません。矯正治療の専門的な臨床経験が豊富な歯科医院を選択されることをお勧め致します。また当院では患者様のご要望があれば、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の長所のみを利用したハイブリッド治療をおこなうことも可能です。これはマウスピース矯正単独の治療が困難な場合、苦手な部分をワイヤー矯正が担当し、その後はマウスピース矯正に切り替えるという治療法です。お気軽にお問い合わせください。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
- 矯正歯科装置を付けた後、しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間〜1,2週間で慣れてきます。
- 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜まりやすく、また歯が磨きにくくなるため、虫歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがって歯磨きを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ医に定期的に受診することが大切です。また、歯が動くと隠れていた虫歯があることが判明することもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。歯肉がやせて下がることや歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで歯の神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 矯正歯科装置などにより金属アレルギー症状がでることがあります。
- 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
- 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形の修正や咬み合わせの微調整をおこなう可能性があります。
- 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
- 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微少な亀裂が入る可能性や、被せ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 動的治療が終了し、装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態の被せ物(補綴物)や虫歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
- 動的治療が終了し、装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや咬み合わせの「後戻り」が生じる可能性があります。
- 顎の成長発育により咬み合わせや歯並びが変化することがあります。
- 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合わせに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合わせが変化することがあります。
- 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
日本矯正歯科学会より引用・改変