子どもの矯正治療
子どもの矯正治療(小児矯正)
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お子様の矯正治療は未来へのプレゼントです。
お子様の健康を歯並びから考えてみませんか?
小児の最大の特徴は成長・発育しているということです。したがって小児期の歯並びや噛み合わせをこの時期から改善することは、望ましい顎顔面の成長発育の大きな助けになります。
また大人になってからのお口のトラブルを防ぐことにもつながります。この時期の不正咬合を放置すると、骨格的な問題へ移行し、矯正治療がより困難になることがあります。
また、小児OSA(閉塞性睡眠時無呼吸症)は顎顔面形態の不調和によって起こりやすいとされており、成人OSAへの移行も懸念されています。
そのため、ちょっとした問題も見落とすことがないように見守ってあげたいものです。
OSA(閉塞性睡眠時無呼吸症)についてはこちら -
お子様にこんな兆候はありませんか?注意が必要かもしれません!
- 永久歯の生える隙間が足りなさそう
- なかなか生えてこない歯がある
- いつもお口がポカンとなっている
- 寝ている時にいびきや無呼吸がある
- ご飯を食べにくそうにしている
- よく前歯をぶつける
歯並びが悪くなる原因
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遺伝
ご両親の骨格や歯の大きさ、歯列の形態などを受け継ぐことがあります。
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不良習癖
不良習癖とは歯列に悪影響を及ぼす口腔習癖のことです。嚥下時に舌を前に出す舌突出癖、舌が常に下方に位置している低位舌、口呼吸、指しゃぶり、爪や唇を咬む 癖などさまざまな種類があります。
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態癖
頬杖、横向き寝、うつ伏せ寝、片側咬みなど。
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過剰歯や先天欠如歯
過剰歯は正常よりも多い歯のことであり、これがあると歯列を乱したり、埋伏すると正常な歯を傷つけたりします。先天欠如歯は生まれつき足りない歯のことです。すき間がができたり、噛み合わせが左右非対称になることがあります。
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乳歯の早期脱落や晩期残存
乳歯が本来のタイミングよりも6ヶ月以上早く抜けてしまうと、周囲の歯が一斉に寄ってくるために永久歯の萌出スペースが無くなってしまいます。逆に乳歯がいつまでも抜けないでいると、永久歯が外側や内側から萌出する可能性が高くなります。
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歯胚の位置異常
歯が萌出する以前の歯胚の位置や方向に問題がある。
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永久歯萌出障害
歯の交換錯誤や過剰歯の埋伏、嚢胞の存在などで正常な萌出が妨げられる。
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耳鼻科疾患
アデノイドや口蓋扁桃肥大、アレルギー性鼻炎、ちくのう症、鼻中隔彎曲、鼻炎、OSA(閉塞性睡眠時無呼吸症)など。
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食生活
成長期のお子様の場合、やわらかい食べ物ばかりを食べていると顎骨の発育に悪影響を与えてしまう可能性があります。その結果すべての歯が並び切るスペースが確保できなくなるかもしれません。
治療の開始時期は?
子どもの矯正治療は年齢や成長によって一期と二期に分けられます。
乳歯が生え始めて、永久歯がすべて萌出完了するまでの期間を一期、永久歯萌出完了後、あごの成長がまだ少し認められるか、ほとんど認められない期間を二期と呼びます。
治療開始が早ければ良いということでもありませんし、遅ければ効果的なタイミングを逃してしまうことになるかもしれません。成長や歯の生え替わりのスピードには個人差があり、治療にはそれぞれのお子様にとって最適な時期があります。
女の子と男の子でも成長の差がありますので、治療の開始時期も違ってきます。単純に年齢だけでは決められないのです。ご自身で判断されず、お気軽にご相談ください。

一期治療(小児矯正)
二期治療への準備運動です
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顎骨の成長発育が旺盛な時期です。骨格の不調和がある場合は改善を試みます。また永久歯の萌出スペースが足りない場合も萌出スペースの管理をします。
不正咬合のお子様はその原因として歯を取り巻く口腔周囲組織である舌、口腔周囲筋、扁桃などに問題があることがほとんどです。それらが舌癖やお口ポカンの口呼吸などを引き起こします。いわゆる「小児口腔機能発達不全症」の状態です。
つまり「食べる」「話す」「飲み込む」「鼻で呼吸する」などの「機能」と歯並びや噛み合わせの「形態」を同時に考えていく必要があります。装置のみの使用だけではなく、筋機能療法も併用し、できるだけ顎骨の成長や永久歯の萌出を正しい方向へ導いていくことを目的とした治療になります。
混合歯列期のため最終的な歯並びや噛み合わせを作り上げるものではありません。二期治療が必要になることもありますが、一期治療で終われることもあります。 -
一期治療のメリットMerit
- 骨格に対する治療は成長期のこの時期でしかできない。
- 歯を抜かないで治療できたり、抜く本数を減らすことができるかもしれない。
- 二期治療が将来的に必要の場合でもその治療を軽度にしてくれる。
- 成人と比較して歯が動きやすく、痛みを感じにくい。
一期治療のデメリットDemerit
- 治療期間が長くなることがある。
- 本人に自覚がないことが多く、治療に協力が得られないことがある。
- 治療効果が少なければ、二期治療が必要になるかもしれない。
- 虫歯のリスクの高い時期のため、より口腔清掃に注意が必要。
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一期治療でよく使う装置
床矯正装置
子どもの矯正治療(一期治療)で使用されることの多い装置です。
取り外しのできる装置で顎を拡げたり、歯を動かしたりする装置です。考え方としては、永久歯が正常に並ぶ隙間がないのは顔、顎の成⻑が悪く、本来の機能が不足しているためという考え方から、取り外しのできる装置を使用して矯正力を作用させ、あとは噛む訓練をすることにより顎顔面が正常な機能を取り戻すのを助けようとすることです。積極的に歯を動かす装置ではありません。取り外せるが故、本人の協力はもちろんご家庭での協力が治療成績に大きな影響を与えます。
後に二期治療が必要になることも多く、適応症かどうか正確な診断が必要です。
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機能矯正装置(オーダーメイドタイプ、既成タイプ)
機能矯正装置とは、口腔周囲の筋肉のバランスを整え、顎の成長を正しい方向に導き、上顎、下顎の位置関係を改善させる装置です。
就寝時も含め、1日12時間くらいを目標に使用します。歯に直接力を加える装置ではありませんが、適した時期に使用することで高い効果が得られます。 -
歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド)
従来、乳歯列期の反対咬合は自然治癒を期待して「生え替わりまで様子を見ましょう」とするのが一般的でした。
しかし、歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド)は早期の改善を目的としているため3歳から使用が可能です。「歯列矯正用咬合誘導装置」とも言われているように舌圧と口唇圧のアンバランスを改善することによって顎が正常に成⻑するように促す装置です。就寝時の使用です。
即効性はありませんので1年くらいの使用は必要になります。
骨格性の反対咬合には効果はありませんので矯正医の適確な診断は必要不可欠です。
既製品を使用しますので、歯型取りの苦手なお子様にも有効な場合があります。
完成物薬機法対象外(薬機法未承認)の矯正歯科装置(医薬品)であり、承認医薬品を対象とする医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。 -
固定式装置
矯正装置の脱着を歯科医院のみで行うタイプです。取り外しができる装置に比べると、治療効果が確実です。
一期治療では、歯列の幅を広げる(クワドヘリックス、バイヘリックス)、歯を押し出す(リンガルアーチ)、奥歯が前によってこないようにするため(リンガルアーチ、パラタルバー、バンドループ)などを使用します。 -
ワイヤー装置(部分的)
一期治療では、部分的にブラケットと呼ばれる装置を歯の表面に貼り付けて、ワイヤーを通し、歯の位置を正すことがあります。
全体的にきれいに並べるのは、二期治療で行います。 -
MFT(口腔筋機能療法) について
子どもの矯正治療を行う上で併用する事が望ましいと思われる場合に行っていきます。不正咬合は家系の遺伝だけではなく、指しゃぶりや舌突出癖、アレルギー性鼻炎や扁桃肥大などによる口呼吸などによっても引き起こされます。
歯の位置は、歯列を取り囲む舌や口腔周囲筋のバランスにより影響を受けています。つまり、不正咬合の成立には形態と機能がお互いに影響し合っており、歯を動かすだけではうまくいかない場合が多々あります。
MFTは、舌突出癖や口呼吸により弛緩した口唇を訓練により調和のとれた状態に改善する療法で咀嚼、嚥下、発音、安静時の舌位や口唇位、呼吸などの口腔機能の改善を目指して舌や口腔顔面筋を訓練し筋肉を協調させる療法です。
効果ははっきり目に見える形では出ませんが、当院では不正咬合を治療する上で非常に重要だと考えております。
二期治療
最終仕上げです
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一般的に矯正装置としてイメージされるワイヤーを用いた本格的な治療になりますが、場合によってはマウスピース矯正でも治療可能の場合があります。「大人の矯正治療」と同じとお考え下さい。
マルチブラケット装置以外にも補助的な装置を併用することがあります。
女子で早ければ13歳、男子であれば15歳くらいから始められることもありますが、顎骨の成長がある場合は治療に大きな影響を与えることがありますので、慎重に開始時期を決める必要があります。また、高校受験や大学受験そして就職、転居などのライフイベントのことも考慮する必要があります。
成人と異なり、歯の動きはスムーズで、痛みも感じにくいため、この時期の本格矯正はおすすめです。
大人の矯正治療についてはこちら
早期治療という考え
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一期治療(小児矯正)は検査や診断をし、治療方針を決定した上での治療になりますが、早期治療は治療開始するには早過ぎたり、嫌がったりして検査ができない幼児に対して、やむなく検査診断はおこなわず、問題が明らかな部分に対してのみアプローチすることです。
早期に不正咬合の芽を摘むことによって、通院回数や費用が最低限になることが少なくありません。 -
早期治療の種類
保隙(ほげき)
乳臼歯を何らかの理由で早期に失ってしまった場合、そのまま放置するとその前後の歯が隙間に移動してくるため、そこに生えるべき後継永久歯が生えてこな かったり、曲がって生えてきたりしやすくなります。それを防止するための装置です。
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咬合性外傷の改善
一部の歯が異常な噛み方をしているために、その歯に過度な咬合力が加わり、ダメージを受けている状態。早期に改善する必要があります。
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悪習癖の改善
指しゃぶりや爪を噛むなどは年齢的に許容できる場合もありますが、口 腔内に明らかな悪影響が認められる場合は改善に向けたサポートを行います。(MFT:口腔筋機能療法)
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受け口の改善
不正咬合の中で反対咬合の場合だけは、例外的に乳歯列期からアプローチをすることがあります。
費用
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治療期間 回数 料金 第一期治療 1~3年 10~20回 297,000~407,000円 第二期治療 1.5~3年 20~36回 805,750~957,000円 ※矯正歯科治療は公的健康保険の対象外の自由(自費)診療となります。
※治療期間、回数は一般的な症例を想定していますので、前後することがあります。
※料金は一般的な症例を想定していますので、前後することがあります(矯正検査料、診断料、調整料、保定装置代金を含んでいます)。
※掲載の料金は税込の金額です。 -
当院からのメッセージ
保護者様ご自身が歯のことで苦労された経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
そのためお子様への歯並びや噛み合わせに関心のある方も非常に多いのではないかと思います。歯の生え替わりのあるお子様のお口の中は絶えず変化が見られますので、何が正常で何が異常なのかの判断が困難な場合があります。当院は矯正歯科医院でもあり、一般歯科医院でもあります。定期的に虫歯の予防処置で通院していただくことによって、口腔管理も同時におこないますのでお口の中に異常があってもすぐに察知し、指摘をさせていただくことが可能です。もし、少しでもお悩みがありましたら、お気軽にお声をかけていただければと思います。 -
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
- 矯正歯科装置を付けた後、しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間〜1,2週間で慣れてきます。
- 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜まりやすく、また歯が磨きにくくなるため、虫歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがって歯磨きを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ医に定期的に受診することが大切です。また、歯が動くと隠れていた虫歯があることが判明することもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。歯肉がやせて下がることや歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで歯の神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 矯正歯科装置などにより金属アレルギー症状がでることがあります。
- 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
- 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形の修正や咬み合わせの微調整をおこなう可能性があります。
- 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
- 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微少な亀裂が入る可能性や、被せ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 動的治療が終了し、装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態の被せ物(補綴物)や虫歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
- 動的治療が終了し、装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや咬み合わせの「後戻り」が生じる可能性があります。
- 顎の成長発育により咬み合わせや歯並びが変化することがあります。
- 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合わせに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合わせが変化することがあります。
- 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
日本矯正歯科学会より引用・改変